ボキャブラリを増やすのに効果的な英単語解剖プロセス
解剖というほど大それたものではないのだが、最近、新規に英単語を覚えてボキャブラリを増す努力を始めた。
一押しの本
「日本人だけが知らない難解英単語: 阿部, 山村 啓人」という本を使っているのだが、これが予想以上に覚えやすくて、このレベルの英単語を覚えるならこの本一択、というほどおすすめできる。 proneの単語のページを引用すると、
prone (形)〜しがちな;傾向のある;うつぶせの (英英) (adjective) to be likely to do something or to be in the habit of doing something (adjective) lying down 類義語: disposed to, inclined to 反意語: disinclined, unwilling 成句 prone position: うつぶせ prone to depression: 鬱になりやすい error-prone: 間違いを起こしやすい 例文:This is a quake-prone region. ここは地震が起きやすい地域だ
という感じ。上記は左ページで、右ページは解説が載っていて、proneがラテン語で「前に傾いた」という意味で、「前のめりの=うつぶせ、傾向がある」で好ましくない場合に使う、ということが解説してある。
英単語を使う上で重要なのは、コロケーションやコンテキスト、すなわち、どの場面でどの単語の前後でその言葉が使えるのかを覚えることで、
例えば、proneを「しがちな」とだけ覚えていると、I am prone to travelling on weekends=週末はよく旅行する、と書いてしまうが、これは英語ではかなり不自然で、I am prone to illness.病気がちだ、のような、悪い傾向の場合のみ使えるということを覚えていないと、使うときにも困るし、読むときにもニュアンスを取り違える。
error-proneという成句も、proneの否定的な意味合いを覚えてると、なぜerror-inclinedやinclined to errorよりしっくりくるのかはっきりするし、納得しながら覚えると逆にerror-prone -> 否定的な傾向、という連鎖で単語の意味を思い出せるようになる。そういった点で、単語を覚える時は単語に関連した知識を同時に入れておくことが好ましい。
同様に、disposed to, inclined to という類義語も見ると、inclinedが「傾いている」という意味で、proneと同じような発想から派生した言葉だと想像がつく。また、似た単語は同じ前置詞を使う場合が多いことも感じ取れる。傾向を表すものは、toが多いと覚えるといい。
さらに少し調べると、disposed toとinclined toはどの文でもほぼ入れ替え可な言葉だとわかる。tend to do, be inclined to, be prone toという言葉のどれかを思いついたときに、同時に類語を簡単に入れ替えて響きを試せるようになって、文を書くときのバリエーションが増す。
反義語も、disinclined, unwillingとあり、inclinedのdis=否定だから、そのままだな、というのがまず理解できる。それから、unwillingということはwillingのun=否定だから、これが「〜しがちな」の否定となるということは、逆にwillingはinclinedと同義なのか?という疑問がでてきて、inclinedで検索をすると、
(省略) or willing to do something: he was inclined to accept the offer
とあり、inclinedにも、「傾向がある」ではない、willingと同様の「〜したい」という使い方があることがわかる。ここまでくると、proneという単語というよりかは、prone関連の単語知識全般を制覇したに近い。1ヶ月後文章にproneが出てきたとして、ほぼ確実に思い出せるだろう。
英英辞典の本当の使い方
英単語を覚える上での、英英の定義の使い方だが、まず、同義の別表現を覚える為に使う。 prone toが
to be likely to do something
と同義で、うつぶせの時は
lying down
に対応してるんだな、downを向いてるということか、といったことを念頭に入れておく。
一般に、英英辞典では、定義と説明の品詞がほぼ同等になるようにしてあり、「cell prone to becoming malignant=悪性になりやすい細胞」であれば、「cell to be likely to become〜」のように、そのまま入れ替えられるようになっているので、そういった入れ替えを行いなががら意味を確かめていくことができる。英語で入れ替えながら読むと、日本語の説明で読んだだけではわからないニュアンスが感じられたりするので、英英も活用すべきである。
自作のススメ
覚えたい単語が「日本人だけが知らない難解英単語」に載っていない場合も多いと思うが、その場合は英単語帳を自作し同様のレイアウトで覚えることをおすすめする。記憶保持と、active vocabulary(聞いて意味がわかるだけでなく、自分で使える語彙)化のしやすさを考えると、最初に少し辞書を引いたり、類語をThesaurus(類語辞典)で調べたり、ノートに書いたりする手間は、かけるに値する。
類語を同時に覚えると、全部調べ上げて覚えなきゃいけない単語の絶対数は少なくなるので、調べてノートに書くと言っても全体から見たら使う時間はむしろ減るだろう。
ノートは何でもいいが、小さめの持ち運びしやすいサイズで、気軽に書ける安いものが好ましい。
おまけ
類語、反義語を覚えることの重要性をさらに強調しておくために、この前調べた英単語について書いておく。
理不尽な absurd, unreasonable
unreasonableはun-reason-ableで、unが否定で、ableが可能の意味なので、「reasonできない」というという意味だと想像できる。ここで、reason=理由、という定義を反射的に思い出してしまうが、reason-ableなので、reasonは動詞の意味、「推論する、判断する、論理的に考える」という意味で、un-reasonable、論理的に判断できない=理不尽だとわかる。
同じ構造の「理不尽な」の類義語が幾つかある。
irrational, illogical
など。これらも同様である。irrational, illogicalの最初のir, ilは否定の意味の接頭辞だが、これはin=否定 (in the houseなどのinとは別の語源)が、in-rationalだと言いづらいので消えた形。rが重なるのは、irationalだと、母音+子音+母音で、最初の母音がアルファベット読みになる法則、つまり「イラショナル」ではなく「アイラショナル」と読まれてしまうことを防ぐため。
sensitive, sensible
sensitiveとsensibleなど似た紛らわしい言葉の使い分けなどはテストなどにも出ると思うが、 sensitiveは「(感覚を)感じやすい、理解のある」や「影響を受けやすい」、sensibleは「分別がある」で、意味はだいぶ違う。
どちらも語源はsenseだが、sensitiveはsensi-t-ive、接尾辞のiveは「傾向がある」という意味なのでsenseしがちな=感じやすいで、一方sensibleはsens-i-ble、bleはableと同じで、可能という意味なので、senseできる、sense可能な=分別がある、という意味となる。
まとめ
このように、英単語というのは個別に覚えていくよりも、有機的に同じ単語や似た単語、反対の言葉などを同時に覚えていく方がはるかに自然な英語をかけるようになるし、記憶も定着しやすい。 毎日10単語覚えて一週間後に70単語覚えるより、一日で30単語覚えるほうが、実は他の覚えた単語と連想して覚えやすいので、記憶に定着しやすい。なかなか、単語を覚える時間を1時間単位でまとめてとることは難しいが、どうせやるならまとまった時間を作って、効率的にリテラシーをあげたい。