カタカナ英語の脱却に相手の唇を見ることが有効
タイトルで説明しきった感じがあるが、英語の発音の覚え方とリスニング力の鍛え方について、自分の考えを書いていこうと思う。
ネイティブは英語をリスニングしているのか?
ネイティブは、耳だけを頼りに英語を聞いているわけではないということを知っているだろうか。この動画を見てみると、そうではないようだ。
耳の錯覚についての動画だが、この中に、同じBarという音でも、唇の動きがFarだと、Farという音に聞こえる、というものがある。 非ネイティブだが英語が得意な友達にこの動画を見せたところ、Farの唇の動きをしている時でも、動画の影響をうけずに、正しくBarと聞きとれる人が多数派であった。一方、ネイティブはFarの唇の動きを見ると、Farだと思い込む。
つまり、非ネイティブスピーカーが英語を「聞こう」とする一方、ネイティブスピーカーは「聞く」一方で、同時に英語を「見ている」のである。
ネイティブの子供は唇を見て英語の発音を覚えている
ネイティブスピーカーがどのように英語の発音を獲得するのか、考えたことはあるだろうか。ベイビートークと呼ばれる、幼児の英語の発音の特徴についてのWikipediaの記事がある。 http://en.wikipedia.org/wiki/Baby_talk
ネイティブの子供も、最初はvとbを間違えたり、tをdと発音したり、thの発音を間違えることが頻繁にあるようである。tとdは、唇の動きが全く同じで、違いは有声音と無声音の違いだけである。vとbの唇の動きも良く似ていて、どちらも歯が唇に触れる動きをする。thをsやfと発音するのは、目には見えづらい、「舌使い」があるからだと考えられる。
これらに共通しているのは、見た目で区別がつかない音を赤ちゃんは間違えやすいということである。赤ちゃんは、発音をする時には口真似をしているのである。
リスニングという名前からくる誤解
非ネイティブスピーカーにとって英語の発音やリスニングは難しいが、耳だけを頼りにしたリスニングというのは、そもそも学習方法としては根本的に不自然だったのである。耳を頼りにするという発想から脱却すると、いろいろなものが見えてくる。
まず、カタカナ英語の不自然さである。耳で聞いている限りでは、はじめはwhatが「わっと」に聞こえることがあるかもしれない。しかし、唇の動きを見てみると、whatと「わっと」が、全く違うことにすぐ気がつくと思う。
whatは、イメージでいうと「ぅわt」のような感じで唇をすぼめてからちょっと開いて、tを発音して、最終的に唇は半開きのままである。日本語でわっと、って言うと、「と」の部分で口をすぼめた状態で終わる。唇だけを見て音を消すと、もはや真似ているのかどうかも怪しいレベルだ。
発音を覚える上では、唇の動きを見て口の動きを真似るというプロセスが、リスニングよりも先に来るべきだということを、ここで主張したい。リスニングと聞くと、CDを使ったような聞き取りをどうしても連想してしまうが、実はそれは、対面の会話よりも進んだ難易度の少し高い作業なのである。
真のスピードラーニング
タイトルはごく一般的な英語の、素早く学ぶという単語としての意味で、例のCD教材とは関係ないということを先に述べておく。 話が逸れたが、英語の発音とリスニングを素早く学ぶのに何が適しているかというと、動画である。 わざわざ書くこと自体ためらわれるが、例えばYouTube。洋楽のミュージックビデオで、歌詞を一旦ざっと見てから、唇の動きをよく観察しながら、音楽を聞くと、いろいろな発見があると思う。 自分の発音での唇の動きと、動画での唇の動きとの違い。そういった違いを意識し、一致させるよう、自分のリスニングや発音の練習にフィードバックさせていく。
リスニングや発音といった生まれつきの面が多いと言われる非ネイティブにとって困難なものも、こうすることである程度は克服できる。発音は少しアクセントがあるけど意思疎通には全く支障がないレベル、リスニングに関してはほぼ完璧と言える状態が、非ネイティブ話者が目指すべきレベルだと思う。実現可能か? Yes.
感想
長くなってしまったが、非ネイティブにとって、英語のリスニング、スピーキングというのは、大きな障害になっていることが多い一方、学校や英語教室、語学学校などで適切なアドバイスがもらえることが少なすぎると思う。外国語が流暢な人の多くを見て、それぞれに共通しているのは、皆、語学を覚える手段を創意工夫してるということ。インターネット上には、英語学習に関するアドバイスや文章がたくさんあるが、根底にある「どう」覚えるのか、ということについて解説してある記事は少ない。
自分も非ネイティブとして英語を覚えるのに苦労して、今でも上達できるよう様々な方法を試していて、友達から英語の覚え方を聞かれることが多いが「こうすると良い」というはっきりとした答えは出しづらい。十分な時間を費やすこと、それから自分なりに仮説を立てて、物事の根底にある法則を発見することが、学習をしていく上で一番重要だと思う。
今までに書いた英語関連の記事のリンクを貼っておく。